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戦果アギヤーをテーマに戦後沖縄の歴史を壮大に描く「宝島(真藤順丈)」

やっと「宝島」を読むことができた。
言わずとしれた直木賞受賞作で、戦後アメリカ統治下の沖縄を1952年から沖縄返還の1972年まで描いた長編作品である。

 

米軍基地から物資を窃盗して庶民に配る「戦果アギヤー」の英雄おんちゃんが、キャンプ・カデナへの侵入後、行方不明になってしまう。
おんちゃんの相棒グスク、弟のレイ、恋人のヤマコの3人を中心に、おんちゃんはどこに消えてしまったのか? おんちゃんが持ち帰ったという想定外の戦果とは? をテーマに、"スター"又吉世喜や"アメリカが最も恐れた男"瀬長亀次郎など実在の人物も交え、アメリカ統治下の沖縄を20年に渡り描いている。

 

読む前から知っていたが、作者は東京出身・東京育ち。沖縄取材は3回しかしてなさそうだ。それにも関わらず、ウチナーグチを自然に使い、戦後沖縄を描き出す力量はすごい。もし、作者が沖縄出身だったら「これは沖縄出身者にしか書けない小説だな」と思ったであろう。沖縄の苦難の歴史、現在にもつながる基地問題、日本(ヤマト)との関係など、立場によって視点が異なる難しいテーマではあるが、消化に成功しているのではないか。個人的には大河ドラマの原作になってほしい。

1つだけ不満があるとすれば、終盤に期待した展開にならなったこと。大いなるネタバレなのでこのページの下の方にスクロールした部分に書いておきたい。もちろん、これは個人的な意見であって、作者のほうが正解なのだろう。

ともあれ、この一冊ですっかり作者のファンになってしまった。次は「墓頭」を読みたい。

 

【第160回 直木賞受賞作】宝島

【第160回 直木賞受賞作】宝島

  • 作者:真藤 順丈
  • 発売日: 2018/06/21
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

 

 

 

-------------以下、ネタバレなので注意-----------------

 

 

 

 

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-------------ネタバレなので読む前に見ないでね!----------------

おんちゃんは結局、3人の前に再び姿を表すことはなかった。長い年月を重ねたあとでも、3人とおんちゃんを会わせてあげたかった。とくにヤマコとは。

第3部のタイトルが「センカアギヤーの帰還」になっているので、ここで再びおんちゃんに会えるのかと思っちゃったよ……。同じように考えて期待していた人はけっこういるはず。以上、ネタバレでした。