今週末の11月11日(土)、12日(日)、コンピュータ将棋の最高峰・将棋電王トーナメントが開催され、ニコ生で中継される。
非常に面白いイベントで、多くの人に観てほしいので、将棋やコンピュータ将棋に詳しくない人のためにガイドをしよう。
(コンピュータ将棋マニアの方々には常識的なことばかりなのでスルーで……)
- 将棋電王トーナメントとは?
- プロ棋士の実力を遥かに超越するソフト
- Ponanza一強から群雄割拠時代へ
- まふ定跡vs独自定跡。序盤にも注目
- プロ棋士たちを驚嘆させる手は間違いなく出る
- BONANZAはどうなった?
将棋電王トーナメントとは?
将棋電王トーナメントとは、5月に開催される世界コンピュータ将棋選手権と並ぶコンピュータ将棋最高峰の戦い。ニコ生のドワンゴが主催で、サイバー空間風の会場で実施されるなど、エンタテイメント性が高く、優勝賞金が300万円と高額なことも大きな特徴だ。
第4回までは上位ソフトにプロ棋士と対局する権利が与えられたが、今大会からはなくなった。プロ棋士との勝負付けは済んだということもあるだろう。
毎度ながら素晴らしい出来のPVも観ておいてほしい。
プロ棋士の実力を遥かに超越するソフト
最大の注目はソフト同士の超次元な戦い。一部ソフトは定跡の構築から人間の手を参考にしておらず、序盤から注目度は高い。ソフトのレベルはプロ棋士を遥かに超えており、ソフトの指した手をプロが参考にするということが当たり前になっている。
PVにもあるが、コンピュータ将棋に詳しい千田翔太六段によれば、「コンピュータのトップが名人なら人間のトップは奨励会受験生」という恐ろしいほどの差に。わかりやすく書けば以下のようになる。
名人←コンピュータトップ
A級
B級1組
B2級2組
C級1組
C級2組
奨励会三段
奨励会二段
奨励会初段
奨励会1級
奨励会2級
奨励会3級
奨励会4級
奨励会5級
奨励会6級
奨励会受験生←人間トップ
サービス精神の高い千田六段の言葉だけに、額面通りには受け取れないが、大きな差があることもまた事実。将棋電王トーナメントの予選を突破することは人類では不可能だろう。
Ponanza一強から群雄割拠時代へ
将棋電王トーナメント注目の筆頭ソフトは、やはりPonanza。
ここ数年のコンピュータ将棋界を圧倒的な強さでリードしてきており、過去4回で3度の優勝、準優勝1回という戦歴を誇る。
しかし、他ソフトの差は着実に縮まりつつあり、世界コンピュータ将棋選手権ではelmoに2度負けてまさかの準優勝という結果に。今回も厳しい戦いになるかもしれない。
Ponanzaはソースコードを一切公開していないため、ほかの陣営にとっても現時点での強さは未知数。事前のアピール文書では、珍しく弱気な発言のため、圧倒的な強さで優勝する可能性がある一方、予選敗退してもおかしくない位置にいる。ディープラーニングによる強化がうまくいくかどうかにかかっているだろう。
対抗はオープンソース勢。
技巧ややねうら王、Aperyなどがソースコード公開しており、電王トーナメントではこれらソースを利用しての参加が可能。
今年の世界コンピュータ将棋選手権では、やねうら王エンジンに技巧の評価関数を加え、独自の改良を加えたelmoが優勝。今回も伏兵が存在しても不思議ではない。
そのほか、参加ソフトの詳しい情報は、コンピュータ将棋研究Blogさんの記事を参考にしてほしい。
まふ定跡vs独自定跡。序盤にも注目
序盤の戦いについては定跡データを搭載しているかどうかも大きなポイントになる。
コンピュータ将棋は実力差が拮抗しているため、序盤の微差がそのまま結果に繋がってしまうことが多い。
定跡データとして有名なのが、まふ氏が作成している「まふ定跡」。まふ定跡を採用することによって、実力に劣るソフトでも、戦型によっては強豪ソフトに一発入れられる可能性がある。今回大会では、まふ定跡の一般公開は停止され、代わりに条件を満たす開発者に提供すると表明している。どのソフトがまふ定跡を搭載しているのか、もしくは独自定跡を利用するのかは気になるところだ。まふ定跡搭載ソフトが多ければ、アンチまふ定跡(作れるかは疑問だが……)を搭載できたソフトは有利になるかもしれない。
プロ棋士たちを驚嘆させる手は間違いなく出る
ニコ生ではプロ棋士の解説を聞くことができる。
初日の立会人は、遠山雄亮五段、解説は阿部光瑠六段、聞き手は中村真梨花 女流三段。
二日目は立会人が勝又清和六段で、解説西尾明六段、貞升南女流初段。
阿部光瑠六段といえば、第2回将棋電王戦で習甦に勝利した棋士で、最近では激やせぶりが話題に。おっとりとした話し方の癒し系キャラでもある。
西尾明六段はコンピュータ将棋に造詣が深く、解説役として適任。そんな西尾六段を驚かす手がどれだけ出るかどうかも今大会の見どころだろう。
また、コンピュータ将棋といえば、PVにも登場していた千田六段が有名だが、解説者としては残念ながら参加なし。しかし、ゲストとして来てくれることを期待しよう。
BONANZAはどうなった?
コンピュータ将棋といえば、世界コンピュータ将棋選手権で初参加・初優勝の快挙をなしとげ、渡辺明竜王とも高かったBONANZAも有名だが、どうなったのだろうか?
2014年の世界コンピュータ将棋選手権を最後に大会の参加をしておらず、今大会も参加をしていない。ソースコードを公開しているが、ほかのソフトのレベルも高くなっているため、役割を終えたということかもしれない。
ちなみに、Ponanzaの名前は、BONANZAから影響を付けて付けられているが、プログラム自体はまったくの別物である。
というわけで、週末はコンピュータ将棋の世界を楽しもう!
最後にわたくし・湯一路の優勝ソフトの予想を。ズバリ、Ponanzaで!
外れても責任はとりません。