ハチワンダイバーといえば、将棋マンガの名作中の名作。
元奨励三段の菅田健太郎が、謎の美少女「アキバの受け師」と出会い、将棋組織・鬼将会へと戦いを挑むというストーリーであるが、作中に局面図が省略されずに出てくることもポイントだ。監修は鈴木大介九段。
自分の何度も読み返した好きな漫画だが、作中の手が最善手だったのかどうかは気になるところ。
というわけで、現在の最強ソフト「水匠2」の力を借りて検証してみたい。
- ハチワンダイバー1巻より 菅田健太郎 vs マムシ
- ハチワンダイバー2巻より 菅田健太郎 vs アキバの受け師(みるく、中静そよ)
- ハチワンダイバー2巻より 二こ神(神野神太郎) vs 菅田健太郎(ハチワンダイバー)
- ハチワンダイバー3巻より 菅田健太郎(ハチワンダイバー) vs 文字山ジロー
ハチワンダイバー1巻より 菅田健太郎 vs マムシ
結果:最善手
対マムシの1局20万円勝負の最終盤。▲4一銀の妙手で先手の菅田が勝勢。
△同銀も△3一玉も詰み。後手投了の仕方なしか。
ソフトの読みは▲4一銀。ただし、▲2四銀でも、▲1三馬でも、▲1九香でも勝ちだ。
ハチワンダイバー2巻より 菅田健太郎 vs アキバの受け師(みるく、中静そよ)
結果:投了が敗着
対アキバの受け師4戦目。菅田が「絶対優勢だと思ってた局面」が以下。
ソフトの評価は互角。
△6六飛、▲6三金、△同飛、▲6四金打、△8三飛と進んで上図となり先手投了。
菅田「攻めを…5手で切らされた」
そして投了。
しかし、ソフト評価値は互角。最善手は▲7三歩成。千日手になる筋もありそう。
敗着は投了と言ってよいだろう。
これ、元ネタは1999年の竜王戦 鈴木大介 vs 中原誠(先後が逆転してる?)だが、居飛車側が勝ってる。なぜ投了したのか謎が多い。
ハチワンダイバー2巻より 二こ神(神野神太郎) vs 菅田健太郎(ハチワンダイバー)
結果:相手悪手による勝利
対ニこ神戦。先手がニこ神。
ダイブして△5ニ飛。ニこ神「香を受けないのかっ?」
ソフトによると、△5ニ飛は悪手。香を受けたほうが良さそう。
最善手として△7三歩打を読んでいる。これも相当指しにくいが……。
▲9一角成に△5五歩!
ニこ神「強引に中央突破かっ!」「あるのかそんな手っ」
ニこ神「あるのか」「この歩はとれない…」
△5五歩は最善手。確かに歩は取れない。取ると△5六歩打がある。
それでも先手有利だ。
次の▲6七金が大悪手で、評価値は後手優勢に。
少し進んで次の局面。
ニこ神「この殴り合いはどうなる?」
△9五銀!
ここでニこ神投了。かっこよく決まっているようで、実際後手の勝ちではあるが、▲7六玉からもう少し粘れそう。
変えて、△6七銀なら粘りようもなかった。
まあ、派手さを考えれば△9五銀でよいのかもしれないが。ちなみにこの対局棋譜は元ネタがなくオリジナルということらしい。
この対局終了後、菅田は「ハチワンダイバー」を名乗るようになる。
ハチワンダイバー3巻より 菅田健太郎(ハチワンダイバー) vs 文字山ジロー
結果:最善手
マンガ家の文字山 vs 菅田。ファミレスでの一局。
上図は振り飛車穴熊の後手文字山が△2八飛の王手を決めたところ。
果たしてこの飛車は取れるのか、取れないのか? 究極の二択に悩む菅田。作品屈指の名場面のひとつ。
菅田は▲1七玉と交わしたが、これが最善手。▲同角で飛車を取ってしまうと、△同桂成、▲1六玉、△3八とで後手勝ち。
さらに進んで文字山が攻防の角を放った局面。
ここで菅田は▲3四歩打!
文字山「この歩に華(スター)がある!」
そして投了。
▲3四歩打はソフトによると3番手。これでも優勢だが、最善手は▲2五桂、次善手は▲2ニ銀打という読み。
しかし、結末としては▲3四歩打が美しいだろう。
ちなみにこの対局は2006年のA級順位戦 丸山忠久 vs 鈴木大介がモデル。どこかで読んだ作者インタビューでオリジナルだと言っていたような気もするが、自分の勘違いのようだ。
というわけで、続きはこちら。